へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「さっきレックスには手帳の持ち主は私じゃないって言ったけど、この手帳は本当は私のもなのよ」



校長先生はレックスさんが机の上に忘れていった古びた手帳を「いちばん最後のページよ。見てもいいわよ」と私に手渡してくれた。

遠慮がちに年季の入った革製の手帳を受け取り、恐る恐るページを開いてみる。



するといちばん最初のページは、今から11年くらい前のことで「4月13日。レックスがまた魔獣をつかって、同級生の男の子を泣かしたみたいだ」と書かれていた。

一気に最後のページを捲ると「3月23日。レックスの魔獣は、新しい生き方を見つけたようだ。幸せになってほしい」と書かれていて、それからあとは何も書かれていなかった。



「えっ……?ということは、校長先生はやっぱりレックスさんが探している魔獣の行方を知っているってことですか?」



驚いてそう聞き返すと、校長先生は「レックスが魔獣を探していることも知っているのね」と校長先生も同様に目を見張って驚いていた。



私は手に持っていた手帳を校長先生に手渡し、前のめりになっていた姿勢を正すと、森に消えていったレックスさんの話しをした。



「レックスさんから直接、話せる魔獣に逃げられたと聞きました。寮の付近にある森ではぐれたからって、ひとりで森に入っていく姿も見ました」

「あらぁ……それなら話しが早いわね。実はね、その話せる魔獣は10年前にこの私が逃がしたの」

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