へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


校長先生は驚きを隠せないでいる私に、レックスさんがまだ15歳だったときのことを話しはじめた。



「レックスがまだあなたと同じくらいの歳のころ……。あの子は魔力が高すぎるからって、クラスメイトたちからは恐れられていてね。いつもひとりぼっちだったの」



ひとりぼっちだったレックスさんは、周りから怖がられるようになると同時に、手には負えないほど荒れていったという。



思春期だったから仕方がないのかもしれないけれど、母の言うことも先生の言うことも聞かず、寮の門限は破るわ授業には出ないわ、ましてやクラスメートをいじめたりと、レックスさんはいわゆる問題児だったと教えてくれた。

それが普通の人間ならまだしも、レックスさんはまだ子供ながらに魔力が大人以上だったからとにかく扱いに困ったらしい。



「私や先生がレックスに注意をしようものなら逆上して、魔法で火や氷を私たちに向かって放ったりするから本当に大変だったのよね…」



校長先生自身も、レックスさんが放った火や氷で火傷を負わされたこともあるそうで、フォルスティア学園に在学していたすべての先生たちも怪我を負わされたらしい。

そんな校長先生の昔話しは、私が知っている気さくで優しいレックスさんからは、想像のつかない話しだった。



「だからいつも私を含むフォルスティア学園の先生たちは、5人がかりでレックスを注意したり叱ったりしていたの」



いくら大人とはいえ、5人集まらないとレックスさんには敵わなかったらしい。

レックスさんはまだ15歳ながらに、底知れない魔力と多彩な魔法をつかうことができたから、先生たちにとっては脅威の存在だったと。

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