へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「あの優しいレックスさんが人を傷つけるようなことをしていたなんて……やっぱり信じられないです…」
校長先生は「私だって信じたくなかったわよ」と表情を暗くさせながら「前置きが長くなってしまったけど、本題はここからなの」と沈んだ声で途切れていた話しを続けた。
「レックスは私の忠告も聞かないで毎日のように魔獣をつくっていたから、魔力を限界まで使い果たしたみたいでとうとう森の中で意識を失ってしまったの」
「えっ……?レックスさんが倒れたって……それは大丈夫だったんですか⁉」
「ええ。見たこともない白銀の龍のような魔獣が、レックスを背に乗せてマーグレーンの自宅まで連れてきてくれたのよ」
全長で20メートルはありそうな蛇にも似た巨体。
岩のように硬そうなウロコは、陽の光りを浴びてきらきらと白く輝いていて。
その銀色の瞳も輝いているように見えて、思わず息をのんでしまうほど綺麗な魔獣だったと。
それでも頭にはガゼルのような鋭く尖った長い角が2本、鼻のあたりには細長く伸びた2本の白いヒゲ、口元で光るサメのような牙。
綺麗な龍だったけれど、いかにも凶悪そうだとも思ったらしい。
校長先生はひとめ白銀の龍を見ただけで、この魔獣は今までレックスさんがつくっていた魔獣とは違う、と気付いたそうだ。
「その龍の魔獣が……レックスさんが全ての魔力をつかってつくったっていうあの、話せる魔獣だったんですか?」
「そうなのよ、メイベル。龍が突然話しかけてきたから驚いたわ」
私は彼に生み出された魔獣です。
森で倒れた彼を助けてください、と凶暴そうな見た目とは裏腹に、丁寧な言葉づかいだったと校長先生は言った。