へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「龍は人間の言葉を話す他にも、自在に姿を変えることができたし、それに人の記憶を消す魔法もつかえたみたいでやっぱり特別な魔獣だったみたいなのよ」
魔獣が話せるというだけでも信じられないのに、さらには何でも自由に変身ができてしまうなんて。
それに人の記憶を消すことができるなんて、先日ジェニファーさんも言っていたけどそんな高度な魔法を扱える魔法使いは、世界中のどこを探しても存在しないというのに。
そんな魔法使いが扱えないような難易度の高いまぼろしの魔法を2つも使える龍は、校長先生が言うようにきっと特別な魔獣なのだろう。
「ん……記憶が消せる?」
占い館で交わしたジェニファーさんとの会話を思い返していたとき、そういえばルキの記憶が魔獣に抜き取られているのではないか、という話しをはっと思い出した。
「そうそう。だからレックスがマーグレーンのデパートで万引きをして捕まってしまったときなんか、店員の記憶を消してこいだなんて言ったりして…」
「ちょっと待ってください校長先生‼記憶を消せるってもしかして……ルキの記憶を消した魔獣っていうのはその龍かもしれません!」
ルキの記憶をむりやり抜き取り、抜き取った記憶が戻らないようルキの脳に防衛魔法を張り巡らせた犯人。
校長先生の話しを聞いていて、その犯人こそがレックスさんがつくった龍ではないかと思った。
「え…?ルキくんが記憶喪失になった理由が魔獣ですって?」
私は校長先生に強い目を向けたまま頷くと、ルキとふたりでマーグレーンに調査に行ったときのことを話した。