へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


ほんの少しだけでも、ルキのことを知れたのだから。

さっそくルキに校長先生から聞いた話せる龍の話しをしてみれば、他に何か思い出すことがあるかもしれない。

私と湖の周りを歩いていたとき、とつぜん断片的に記憶を取り戻したときのように。



「それにしても、ルキくんの記憶を抜き取ったのは違う魔獣じゃないかしら?あの龍は心優しい魔獣だからそんなことはしないはずよ」

「え?龍がルキに襲いかかったんじゃないんですか?だって記憶を消すだなんてそんな難しい魔法、使える魔獣はそうそういないですよ」



校長先生は「人に無差別に襲いかかるような魔獣じゃないのよ」と、首を横に振った。



「レックスがつくった龍が、主様のご命令とはいえ人を傷つけるようなことをしてしまった、と辛そうに話してくれたことがあったの」



校長先生が言うにはレックスさんは龍にも、その力を試すために同級生を襲うよう命令でもしたんだろう、とため息を吐いた。



「悪いのはレックスなのに、龍は人を傷つけてしまったことを悔やんでいたの。銀色の瞳から涙をいくつも零しながら、命令をきかなければ良かったと繰り返していたわ」



その姿を見ていたら気の毒に思えてきた、と。

校長先生の話しを聞いていた私も、なんだか龍がかわいそうに思えた。



龍は本当は、人を傷つけたくなかったんだ。

でも創作主の命令には怖くて逆らうことができないから、従うしかなかったんだ。

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