へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
この人……やっぱりただ者じゃない。
蝶のような小さな魔獣の気配にも、いち早く気付くことができるなんて。
けれどもっと驚かされたのは、離れた位置にいながらも、小さな的を正確に撃ち落としたということ。
これは本当に凄い。
イメージ通りに魔法を発動させることですら、私にとっては難しいことなのに。
いとも簡単に炎を出現させて、それを意のままに操ることができるなんて。
この銀髪の少年の手にかかれば、きっと容易いことなのだろうなぁとビックリした。
「助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。もうこの森には入ったらいけないよ。ここには誰かがつくった魔獣がたくさん住み着いていて、巣窟のようになってるから。じゃあ俺はもう行くよ」
颯爽と背中を向け、深い森の中に歩き出した少年を「待って!」と咄嗟に呼び止めた。
少年は振り返ることはなかったけれど、私の呼びかけに足を止めてくれた。
「どこに行くつもり⁉この森が魔獣の巣窟なら、あなたもここから早く抜け出さなきゃ!いくら魔法が上手に使えるからって、危険すぎるよ!」
それに少年は、自分のことすらも分からないような状態なんだ。
そんな彼をこのまま放っておくことなんて、私には出来なかった。
「そうだ!あなたも魔法使いなら、私が通うフォルスティア学園に入学しなよ‼ここら辺には魔獣がうじゃうじゃいるから、学校にいる方が安全だよ!」