へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「あっ、ルキ‼おはようっ!」



校長室から出て早足で教室に向かっている途中、3階の廊下に差し掛かったときに先を歩くルキの後ろ姿を見つけた。

教室に入ろうとドアノブに手をかけていたルキははっと振り返り「あ、おはようメイベル」と足を止め笑顔を返してくれる。



ルキのふわりとした笑顔に、どくん、と胸が大きく鼓動を打った。



「今日の夜なんだけど、また寮を抜け出して会えないかな?」



熱のあがりはじめた顔。

必死に平常心を装う。



「それはいいけど……どうしたの?また魔法の練習がしたいの?」

「あ……いや、そうじゃないんだけどね。ルキに話したいことがあって…」



何も消灯時間のあとに寮を抜け出してまで会わなくても、休み時間だとか放課後だとか、ルキと話せる機会はいくらでもあるのだけれど。

その話したい内容というのが、今朝校長先生から聞いた『レックスさんの話せる龍』の話しなだけあって、誰かに聞かれるわけにはいかないし。



またこっそり寮を抜け出さなければいけないけど、周りから完全に人の気配が消える夜がいいと思ったのだ。



ルキは不思議そうに首を捻りながらも「わかった。じゃあ今夜、一緒に魔法の練習をした外灯の下で会おう」と言葉を残し、教室に入って行った。

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