へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「夜に寮を抜け出してまで、あのクソ転校生に話したいことってなんだよ?」
ぎくり、と心臓が飛び跳ねた。
ライザに寮を抜け出すことまでバレてしまっている…。
まさかカサエル先生や寮母のサマラさんに、私が寮を抜け出そうとしている、と告げ口をするつもりなのかもしれない。
まずい、それはまずい展開だ。
だけどライザに寮を抜け出すことは内緒にしてほしい、なんて言ったって聞いてくれるわけがない。
「いや……別に……そんなこと言ってない」
それならもう私には、しらばっくれるという選択肢しか残っていなかった。
「告白でもするつもりか?お前もしかして……クソ転校生のこと好きなんだろ?」
「なっ……違う‼違う違う、そんなんじゃないってば!」
「まさか図星かよっ?ムリムリ!お前みたいなへなちょこのブスが、相手にされるわけないって。身の程知らずとはこのことだなっ‼」
ぎゃはははは、とライザとトールボットのイジワルな笑い声が廊下にこだまする。
私はマグマのように熱くなった顔を俯けると、逃げるように教室に駆け込んだ。
悔しい…悔しい、悔しい!
なにがへなちょこだ、なにがブスだ、なにが身の程知らずだ。
そりゃあ確かに私は顔もそれほど良くなければ、魔法の成績に至っては実技も筆記もびっくりするくらい悪いけれど。
まぁまぁイケメンだし、実技も筆記も常に1番のライザと私はまるで雲泥の差だけれど。
ちょっと顔がいいからって、ちょっと魔力が高いからって、ちょっと魔法が上手に扱えるからって調子にのりすぎ!
……と言ってやりたくても、勇気のない私はしくしく泣くことしかできなかった。