へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「じゃあ、ピーちゃんお願いね。絶対にピーとかって鳴いたら駄目だよ?とにかく寝たふりをしてね?」

「ピピッ‼」



消灯時間の22時を過ぎてすぐのこと。

再び私に変身したピーちゃんがベッドに入るのを確認し、そっと部屋の扉を閉めた。



昨日の夜のエイミーは「バレないようにね」と笑顔で送り出してくれたのだけれど、さすがにケンカをしているからか私にかけられる言葉はなかった。



非常灯の緑の明かりだけの廊下に出ると、頼りになるのはいつも活躍してくれる、この手のひらサイズの小さなランプだ。

あまり煌々と照らしてくれるランプだと、すぐにエリノア寮長やサマラさんに見つかってしまいそうだから、小さなランプの少ない明かりがちょうどいいのだ。



エリノア寮長が5階の3年生の部屋から、順に見回っていることを知っている私は、今のうちに素早く1階のトイレまで走る。

1階のトイレまでたどり着くと、珍しく今日は5つあるうちの個室が、4つも誰かが入っていた。



なんで今日は、普段はがら空きのはずの1階のトイレが人気なんだろう。

と、不思議に思いながら、唯一空いていたいつも脱走する小窓があるトイレの個室に入った。



そういえば今朝、サマラさんが「2階のトイレは改装工事が入るから、初等部のみんなは、1階のトイレか3階のトイレを使うように」と言っていたのをふと思い出した。

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