へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
涙を流しながら、目を固く瞑ったそのときのことだった。
地を揺るがすほどの激しい爆発音が耳を貫いた。
驚いて目をあけると、手を伸ばせば届くほどの距離まで迫っていた魔獣の足元から、勢いのある炎が天へ向かって柱のように噴き上がった。
「うわぁっ……‼なにっ⁉なにがおきたの⁉」
2体の魔獣は避ける隙もなく、燃え盛る火柱に飲み込まれていく。
そして断末魔のような「ギィィィーッ」という叫び声だけを残し、火柱の中からその姿を消した。
何が何だかわからないけれど……どうにか助かった?
雲に吸い込まれるようにして上がっていた火柱も、私の目の前から消えた。
もう魔獣の気配はどこにもない。
「良かった……」
肩の力が抜けていくと同時に、涙がこみ上げてくる。
まだ身体の震えが止まらない。
そんな中で背後から枯れ葉を踏む誰かの足音と、「大丈夫?」と私に問いかける優しい声。
びくっと肩を弾ませながら振り返ると、そこにはいつの間にかルキが立っていた。
「ルキ……」
ルキの優しい笑顔を見た途端に、涙が滝のように溢れて溢れて、ルキの笑った顔が滲んで見えない。
「メイベルが魔獣に襲われているのが見えたから、助けようと無我夢中で魔法をつかったけど…。良かった、間一髪間に合って…」
無事で良かった、と私の目線に合わせて腰をかがめたルキは、微笑みながら右手の親指で私の涙を拭ってくれた。