へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
いつになく真剣なルキの瞳。
私からほんの少しも逸らされることのない強い眼差しは、決して冗談を言っているようには見えない。
「どういうこと……?」
パパとママを殺した魔獣はルキ?
いや、パパとママを殺した魔獣は大きくて白い蛇のような姿をしていた。
誰の目から見ても、天井を突き破って現れた蛇とルキが同一ではないことは明らかだ。
そもそも、ルキは魔獣ではなくて人間なのに。
「俺はレックスさんが探している話せる龍の魔獣。罪の意識に耐えられなくなってしまって、自分で自分の記憶を消し去り人間として生きてきた、魔獣なんだよ」
「ルキが……魔獣?」
嘘だ。
嘘だ、嘘だ、嘘だ。
ルキが本当は龍の魔獣だなんて嘘だ。
だってルキは、何度も私を魔獣から守ってくれた。
私が落ち込んでいれば励ましてくれたり、話しかけるたびに優しく微笑みかけてくれたり。
マーグレーンに行ったときだって、はじめて見る時計台に目を輝かせていたり。
その姿はどこからどう見ても人間そのもので、まさかレックスさんによって『つくられた存在』とは思えなかった。
「嘘だ‼そんなの絶対に信じない‼」
首を横に振りながら否定をするたびに、大粒の涙がボロボロと落ちる。
ルキの雪のような白い手が、私の両手を優しく包み込む。
「レックスさんの指示とは言え、何の罪もない家族を壊してしまったんだと思うと……辛くて辛くて、その重たすぎる罪を背負うことができなかった」