へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
ルキは銀色の瞳に涙を浮かべ、私の両手を強く握りしめながら話してくれた。
ルキは10年前に私とパパとママが住んでいた木製の小さな家を、レックスさんに言われて襲撃したことを鮮明に覚えていた。
レックスさんに言われるがままに、天井を突き破ったとき。
私とパパとママの、耳をつんざくような悲鳴に驚き戸惑ったこと。
一瞬にして瓦礫の下に埋もれてしまったパパとママを呼びながら、泣き叫んでいる私の姿に胸が痛くなったこと。
それでもレックスさんの指示だから、私を殺さなければいけないと感情を押し殺して牙を向けたこと。
でも、どうしても私を守る防衛魔法を破ってまで噛み殺せなかったこと。
いくら指示だったからといえ、どうして罪のない人を傷つけてしまったんだと悔やんだとルキは話してくれた。
瓦礫に埋もれて動かなくなった2人の人間と、そんな人間を呼びながら泣き叫ぶ子どもがどうしても頭から離れなかった。
レックスさんの傍らにいながら、1日たりとも私たち3人の家族を忘れたことはなかったのだと。
「私も……10年前のあの日のことは覚えてるよ。白い蛇のような魔獣に牙を向けられたこともまだ覚えてる。あのとき、防衛魔法越しに私を見ていたのが、ルキだったっていうの?」