へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「ちょっと待ってよルキ……。殺すって、そんなことをしたらルキは……‼」
レックスさんが死ぬということは、すなわちレックスさんの持つ魔力が完全に消失してしまうということ。
レックスさんの魔力が跡形もなく消失してしまえば、レックスさんの魔力からつくられた魔獣も全てこの世から消えてしまうということなのだ。
それはつまり、レックスさんの死と同時にルキも消えてしまうということになる。
「俺も消えてなくなる。だから仇討ちなんだよ、メイベル。いくら指示だったとはいえ、メイベルのご両親を殺したのはこの俺なんだから」
「待って……ちょっと待ってよルキっ」
「本当にごめん……メイベル。ご両親を死なせてしまった罪は、レックスさんと俺が死をもって償う。そんなことしかできなくて、本当にごめん」
森を映すルキの銀色の瞳から、煌々とした光が放たれた。
「ちょっ……ルキっ‼何をっ⁉」
あたり一帯を真っ白に染めあげるほどの強い光に視界を奪われてしまう。
目が痛いほどの眩い光があたりを照らしたのは、時間にするとほんの一瞬のことだった。
そして光が消えたと同時に目の前に現れたのは、白銀の身体を蛇のようにうねらせ宙に浮かんでいる巨大な龍。
「あっ……この魔獣はっ…⁉」
それは、私が10年前に見た、頭の先から尾の先まで20メートルはあろう巨大な魔獣。
7歳の当時は蛇だと思っていたけれど、改めて見てみれば白い身体にはコウモリに似た翼が2枚もある。
それに頭にはガゼルのような、細長く尖った角が2本生えている。
記憶とは少し違うところもあるけれど、それでもやっぱり天井を突き破って現れたのは、目の前にいるこの魔獣だ。