へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
魔力がほとんど残されていない今の状態で、もし魔獣に襲われてしまったら最後だ。
松明を片手にビクビクしながら、ルキの姿を探しつつ奥へ奥へと歩を進めていく。
「ルキーっ‼いたら返事してよーっ‼」
葉がさざめく音に混ざり、暗い森の中でルキを呼ぶ私の声が反響する。
付近に潜む魔獣に自分の居場所を教えているようなものだから、声をだすことが危険ってことはよくわかっている。
それでも魔力が残されていない私がルキを探す手段として使えるのは、必死に呼びかけることくらいだ。
もっと派手に魔法が使えるだけの魔力があれば、自分の足をうんと速くさせたり、視力を良くさせて遠くを見ながら探したりだとか、もっと効率よくルキを探すことができるのに。
松明の明かりを頼りに、方向感覚もないままルキを呼びひたすらに足を動かす。
そんな中で、離れた場所から枯れ葉を踏む乾いた音が聞こえてきた。
「……なにかいる?」
はっと身をかがめ、枯れ葉を踏み鳴らす音に耳をすませてみる。
カサカサカサ、と速いテンポで足音が聞こえる。
何かが走ってこちらに向かってきているような、そんな音だ。
足音がだんだん大きくなってくる。
それと同時に緊張も高まる。
あっという間に足音は、もうすぐそこまで来てしまった。
何者かの気配をすぐそばで感じ、冷や汗がこめかみを伝う。