へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


ざくざくと落ち葉を踏みながら、私の前をぴょんぴょん走るピーちゃんを「待ってよーっ」と、慌てて追いかける。

魔力も体力も大蛇との闘いで消耗しきってしまったから、少し走っただけでも息があがる。

ピーちゃんは私との距離が開いては振り返って立ち止まり、また走っては振り返って立ち止まり、を繰り返しながらも着実に奥へ進んでいく。



「あっ、向こうに何かあるよピーちゃん‼あれは何……?小屋みたいな…」



ピーちゃんの瞳から放たれる光の奥に、木々ばかりの景色の中でひっそりと佇んでいる木製の小屋が見えてきた。



こんな森の中にもしかして民家が?

……そんなわけはないか、この森に凶暴な魔獣が住みついていることを知らない人はいないのだから、こんな場所に住もうなんて人はいないだろう。

唯一この森に住めるのは、凶暴な魔獣の創作主であるレックスさんだけだ。



となればあの小屋は、もしかしてレックスさんが誰も寄せ付けたくないと言っていた、秘密のアトリエなのだろうか?



「ピピーッ‼」



ピーちゃんは「行ってみよう!」とばかりに鳴くと、ぴょんぴょん跳ねながら小屋に向かっていく。



「ちょっと待ってピーちゃん‼小屋の扉の前に誰かいるみたいっ」



扉に背を預けてしゃがみこんでいるのは、まるで6歳くらいの小さな子どものような人影が見える。

ピーちゃんは私の声に足を止めると、さっと木の影に身を隠した私のもとへ戻ってきた。
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