へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
私がアトリエらしき小屋に背を向けると、ピーちゃんは「待って!」と言うように私の足首に小さな前足を添えた。
「え、なに?」と私が足を止め下を向いたところで、ピーちゃんは瞳から放つ懐中電灯のような光よりも、さらに強い光を放った。
するとピーちゃんは身長が1メートルほどの、小さな男の子に姿を変えた。
その短く黒い髪型といい、上下とも水色のパジャマのような服装といい、小屋の前で眠っている男の子そのものだった。
「あれ……ピーちゃん。どうしてあそこにいる男の子に変身なんかするの?」
と男の子に変身したピーちゃんに問いかけたとき、私の目線がぐんぐん下がっていっていることに気が付いた。
「うわっ……ちょっ、なにこれ⁉」
あっという間に男の子に変身したピーちゃんと目線が合わさる。
恐る恐る自分の両手を見てみれば、手が倍の大きさほど小さくなってしまっている。
それにピーちゃんが変身した男の子と同じ、いつの間にか水色のパジャマなんて着ているし。
「えっ……私、もしかして変身しちゃってるの⁉」
ああ、手鏡くらい持ってくれば良かった‼
と焦る私の手首を掴んだピーちゃんは突然走り出した。
「行こう。この姿ならあの魔獣に襲われたりしないから」
「あ、そうなんだ?だから私のことも魔獣の姿に変身させてくれたの?すごいねピーちゃん、自分が変身できるだけじゃなくて私にもその力をおすそ分けできるなんて。……って、今ピーちゃんの声が頭の中に響いて…」