へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
顔を俯け眠っていた男の子がはっと顔をあげると、思わず「ぎゃあっ‼」と驚き叫ぶような声をあげてしまった。
顔をあげた男の子には鼻や口はなく、額いっぱいを埋めるほどの大きな目がひとつあるだけだ。
「はぁ?サボってるって?解雇だって?おいおい、これは立派な作成なんだよ。こうやって眠ったふりをしていれば、うっかり小屋に近付いてきた人間がどうしたんだい?とかって声をかけてくるだろ?」
声をかけてきた瞬間に、このカマでズバッと首を落としてやるんだよ。
とひとつ目の男の子が、自分のお尻の下から血がべったりとついたカマを出してきたりするものだから、また「ひぃぃっ‼」と声が洩れてしまった。
私がパニックに陥っている中でも、ピーちゃんは至って冷静だ。
「それでもレックス様から聞いたことだ。新しい見張り役として、僕と隣にいる彼がこの場の管理を任されたんだよ」
「はぁ?それ本当かよ?なんで真面目に働いてるのに解雇なんだよ」
「それはレックス様から直接聞いてくればいいことだ。とにかくこれは命令なんだ、わかったらそこをどいてくれ」
ピーちゃんが額のひとつの目で男の子の魔獣を鋭く睨みつけると、血がついたカマを手に立ち上がり「はいはい、わかったよ」と残し去って行った。
「すごい……すごいよピーちゃん‼本当に魔獣と話せるんだね!」
「って言っても話せるのは、感情のある魔獣じゃなきゃ無理だけどね」