へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
校門に背中をつけて、ため息を吐きながらずるずると腰を落とした。
「ごめんね、ルキ。私が寝坊さえしなければ、門は開いていたのに。誰か先生が通りかかるまで、しばらく待たなきゃいけなくなっちゃった」
ルキは何も答えることはなく、真剣な面持ちで校門を見入っている。
「どうかしたの?」
しばらく立ったままのルキが気になって、俯けていた顔をあげた。
ルキは校門の鉄格子を両手で掴むと振り返り、門に背中を預け座り込む私を見おろした。
「じゃあ俺が門をあける。メイベルは危ないから、少し離れててくれないか?」
「うんわかった……って、えぇっ⁉」
鉄格子を掴むルキの両手の平が、青く儚い光を放った。
飛びあがるようにして門から離れた瞬間、ルキの手からは波が引くようにして青い光が消えてしまった。
強い魔力を持った校長先生でしか、開けることが出来ないはずの校門。
「ほら、開いたよ。これで中に入れる」
ルキが笑顔でくるりと振り返ると、固く閉ざされていた門がひとりでに開いていく。
「えぇえぇぇえっ……⁉」
校長先生がかけた強い魔法を、あっさりと破るなんてどういうこと?
校長先生が言っていたけど、この校門は100対の魔獣が一斉に攻撃をしても、破れないほどの強い防衛魔法が掛けられているのに?
それをあっさりと破るなんて……信じられない。