へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「ルキはただの魔力の塊なんかじゃない‼」
3メートルの距離を保ち足を止めたレックスさんの、心ない発言に怒りがふつふつとこみ上げてくる。
すっかり元気をなくしてしまったピーちゃんを足元にそっとおろし、「やっぱりあなたのことは許せない!」とレックスさんに向かって右手のひらを向けた。
パパとママを殺すようルキに指示を出したことも、ルキを侮辱したことも許せない。
残る魔力を全てぶつけてやろうと思ったところで「駄目だ、メイベル」と優しい声に止められた私はびくりと肩を弾ませ、振り返った。
私を止めた声の主は間違いなくルキのものだけど、後ろにいたのはよろよろと身体を起こした白銀の龍だった。
「メイベルが敵う相手じゃない。俺が彼の足止めをするから、メイベルは小さな魔獣と一緒にこの森から出るんだ」
「ルキを置いて逃げるなんて私にはできないよ!」
ルキはレックスさんに深いダメージを負わされているみたいだ。
明らかに弱っているルキを、レックスさんの元へ残すなんて出来るはずがなかった。
「メイベル……お願いだから、俺の言うことを聞いてくれ。彼が相手だと、俺はメイベルを守りきることができないかもしれない」
「嫌‼そんなの絶対に嫌!」
このままルキと離れてしまったら、もう二度とルキと会えないような気がする。
「ルキと一緒にいたい」と強い眼差しを送り返すと、ルキは凄むような視線を私から逸らすことはなく「ここから離れろ!」と、聞いたこともない荒い口調で牙を光らせた。