へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「メイベル‼」
一瞬にして涙でいっぱいになった視界の中でルキが私を振り返って叫んだ。
「ル……ルキっ」
太ももから流れ続ける血が、枯れ葉をじんわりと赤く染めあげる。
血を流しながら倒れている私に気付いたレックスさんは、すっかり荒れ果ててしまった森に「わっはっはっは!こりゃあ傑作だな‼」と、豪快な笑い声を響かせる。
「動けないなら今がチャンスだな。悪いが、俺の秘密を知ってしまったメイベルには死んでもらう」
絶対にこんなところで死にたくない!
そう言い返すことすらもできないまま、痛みに悶絶している私の周りを取り囲むようにして炎が地面から噴きあがる。
それと同時に、レックスさんの両手から飛び出していた氷柱がようやく止んだ。
「あっ‼急に炎がっ⁉」
……レックスさんは本気で私のことを殺すつもりなんだ。
わかっていながらに、炎を消しされるほどの余力もない私はただひたすら「やめて‼」と力ない声を出すことしかできない。
「やめろ‼メイベルには手を出すな‼」
揺らめく炎の向こう側で、ルキは氷柱をリフレクションで跳ね返しながら、さらなる攻撃を仕掛けようと右手の甲を赤く光らせている。
「おっと。そのおっかない右手から魔法なんか放つんじゃねぇぞ?お前が俺に攻撃を仕掛けたその瞬間、メイベルを焼き殺すからな」