へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「……わかったよ」
ルキは言われるがまま、これまでに氷柱を跳ね返し続けていたリフレクションを解き、レックスさんに向けていた右手も下ろした。
背中しか見えない状態だから、私の位置からルキの表情はわからない。
ルキも悔しいだろうなと思うと、足をひっぱってしまった無力さにまた涙がこみ上げてくる。
「どうすればメイベルを助けてもらえる?」
それでもルキが私を必死に助けようとしてくれていることがひしひしと伝わってくるから、こみ上げてくる涙を抑えることができなくなった。
これ以上ルキの足を引っ張るようなことはしたくない。
自分の足で、自分の力で私を取り囲む炎から脱出しなくちゃ。
両手を地面につき、グッと力を入れて上半身を起こす。
「ああぁっ……‼」
左足を地面につけた瞬間、激痛が走る。
「メイベル‼動いたら駄目だ!」
「大丈夫……大丈夫だよ、ルキ」
それでも血が止まらない患部を両手で抑えながら、よろよろと立ち上がる。
「そんなボロボロの身体でどうするつもりだ、メイベル?まさか炎の中を飛び込もうなんて考えてねぇよな?」
レックスさんは「そうはさせない」と口の端をニヤリと吊り上げると、私の周りを囲む炎の、そのまた周りにずらりと魔獣を出現させた。
「なっ……‼」
炎を囲むようにして現れた魔獣は、秘密のアトリエらしき小屋の前で見たひとつめの男の子だ。
その数はなんと40体ほど。
片手にカマをかまえ、バチバチと火花を散らす炎を挟んで私をじっと睨みつけている。