へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「万が一炎の中から脱出できたとしても、俺の魔獣たちがメイベルを殺すからな。どのみちお前はここで死ぬ運命だ」
「最低っ……‼」
唇を強く噛み、レックスさんに射るような視線を送る。
レックスさんは「仕方ねぇなぁ。それならひとつだけ、メイベルが助かる道を用意してやろう」と勝ち誇ったような薄ら笑いを返してきた。
すかさずそれが何かと聞き返したのはルキだった。
「白龍……いや、今はルキか?お前が俺にもう一度忠誠を誓えば、メイベルにはもう手は出さないって約束しよう。俺と一緒に弱者を徹底的に排除して、強い者だけが生き残る世界をつくろう」
弱者を徹底的に排除する…?
レックスさんはルキに忠誠を誓わせて、また罪のない人々を襲うつもりなんだ。
「なんのためにそんな世界をつくるのよっ‼」
「俺は周りよりも強い魔力を持っているというだけで、ガキの頃はクラスメイトからも先生からも怖がられ、今でも魔力を持たない人間から怖がられながら生きてきた」
「だからレックスさんは……強い者が好奇の目を向けられたりしないような、強い者だけの世界をつくろうというの?」
「そういうことだ。お前も魔法使いなら、少しは俺の気持ちもわかるだろう?」と私に聞き返してきたレックスさんは、ほんの一瞬寂しそうな顔をしたことを私は見逃さなかった。
「確かに…魔法が使えない人から見れば、私やレックスさんは怖い存在なのかもしれない。好奇の目を向けられることだってあるけど……それでも、レックスさんを慕っている人はたくさんいるよ」
私は上手に魔獣をつくれるレックスさんに、ずっとずっと憧れていたんだよ。
炎の中に閉じ込められたままの私は、熱気と煙で頭がぼーっとした状態でそう叫んだ。