へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「ルキ‼私のことはもういいから……レックスさんの言いなりになんかならなずに、ルキは優しいルキのままでいて…。早くここから逃げて!遠くに行って、もう二度と戻ってこないで!」



レックスさんの指示で人を襲うたびに、ルキの心は悲鳴をあげる。

そうやってどんどん、ルキの心は壊れていく。



ルキの辛そうな顔なんか想像したくない。

辛く悲しい思いをたくさんしてきたぶん、幸せになってほしいと心の底から思った。



「メイベルはそれでいいのかもしれないけど、そんなの俺が嫌なんだよ‼メイベルがこの世からいなくなってしまうなんて、もうどれだけ探しても会えないなんて、嫌なんだ」



ルキの口から放たれたその声は、聞いたこともないほど強く、見たこともないほど真剣な眼をしていた。



「だから俺は敵わないと知っていながらも、レックスさんとたたかってるんだ!メイベルのことを何がなんでも守りたいから。メイベルは俺にとって何にも変えられない大切な存在だからだ‼」



ルキから渡された熱い声。

何にも変えられない大切な存在、という想像もしていなかった言葉が頭の中でこだまのように響く。

顔がぽーっとしてきたのは、炎の熱気のせいだけじゃない。



「でも私……何もかも忘れてしまうのは嫌だよ…」

「大丈夫、俺はちゃんと覚えてるから。メイベルのご両親のことや、エイミーちゃんやライザくんのことも。メイベルが俺の記憶が戻るよう手を貸してくれたように、俺もメイベルと一緒に思い出を拾い集めるから」



だから、どうか生きていてほしい。

そんなルキの優しい言葉に胸を打たれた。
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