へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「大切な存在ねぇ……もしかしてお前メイベルに惚れてんのか?どんなに人間のように振る舞ったところで、お前は魔獣なのになぁ」
レックスさんはゲラゲラと声をあげて笑いながら、レックスさんの方に向き直ったルキへ一歩一歩、枯れ葉を踏みしめながら体を寄せる。
「まぁそんなことはどうでもいいか。つーことは、お前は俺に忠誠を誓うんだな?」
「……誓うよ」
レックスさんは「そうか、ならメイベルにはもう手は出さない」と笑いながらルキの前で足を止めたあと「だが、その前にお前をしっかり躾しておかなきゃな」と、ルキの首をいきなり右手で鷲掴みにした。
レックスさんの強い力で、締め上げるように首を掴まれたルキは「うっ」と苦しそうな声を洩らしている。
「ルキっ‼レックスさんやめてよ‼今すぐルキから手を離してあげて!」
「こりゃあ面白いな。ふつう魔獣は攻撃を受けても痛がったり苦しんだりなんかしないんだが、やっぱりお前は特別な魔獣だな」
私の声は届いているはずなのに、レックスさんはルキの首をぎりぎりと締めながら「苦しそうだなぁ、白龍?」と笑うばかりで私には見向きもしない。
それでも私は懸命に叫んだ。
「やめてよレックスさん‼レックスさんだって本当はルキのことを大切に思っていたんでしょ⁉ルキに感情があるのは、レックスさんがたくさん愛情をかけてつくりだしたからなんでしょ⁉話し相手が欲しくてたまらなかったから、ルキは魔獣なのに言葉を話せるんでしょ?」
愛情をかけてつくった魔獣を、どうして傷つけるようなことをするの?
と問いかけた私を視界の隅にもいれてくれないレックスさんには、やっぱりなにを言っても響かないようだった。