へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
ルキの不意に見せられた柔らかい笑顔に、とくん、と胸の鼓動が跳ねあがる。
銀色の瞳に見つめられ改めて思うのは、やっぱりルキは素敵な人だなぁ、ということ。
そう思わせるのは整いすぎている外見だけではなくて、ただのひとつの棘もない優しい性格。
悪いところも含め全てを包み込んでくれるんじゃないかと、馬鹿な錯覚を起こしてしまうほど、ルキは優しい。
そして私のような普通の子が、外見も内面も魅力的な彼と、肩を並べて歩くだなんて……なんだか急に恥ずかしくなってきた。
ルキと私が、笑えるくらい釣り合いがなさすぎて。
例えるならば、ダイヤモンドとその辺に転がっているただの小石を並んで飾っているようなもんだ。
深いため息が洩れる。
「何者だっ……‼」
肩を落としとぼとぼ歩を進めていると、突然だだっ広い校庭に、張りのある低い声が響いた。
「へぇっ⁉なっ、ななななにっ⁉」
慌てた様子で校舎から走り寄ってきたのは、カサエル先生だった。
カサエル先生は背が低くて、頭に毛が薄っすらとしかはえていないオジサン……じゃなくて、私がいる1年生のクラスの担任でもあり数学教師だ。
魔法学校の先生というだけあり、もちろん魔法の扱いも上手。
とても厳しい先生で、私たち1年生の生徒たちはカサエル先生のことを『鬼教師』と密かに呼んでいる。
カサエル先生は睨むような鋭い眼差しを、ルキに向けていた。