へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
そのとき…
私の首を「早く‼早く‼」と叫びながら締め続けるレックスさんの脇腹に、握り拳くらいの大きさはある氷の欠片が勢い良くぶつかってきた。
「うわっ……‼なんだ⁉」
ひとつ、ふたつと森の奥から放たれる氷の欠片は、氷を避けようと身体をねじるレックスさんを追いかけているように見えた。
氷はレックスさんだけを狙っている。
もしかして誰かが私を助けてくれた……?
レックスさんが私の首から手を離したことでようやく解放された私は、地面に倒れ込みながら激しく咳き込んだ。
「大丈夫かーっ⁉」
氷を放った主の声だろうか。
森の奥から誰かが走ってくるような足音も聞こえてくる。
「おい、しっかりしろ‼」
倒れた木々を飛び越えながら現れたのは、影のように真っ黒な雄ライオン。
そしてその上に跨がっていたのは、なんとライザだった。
「テメェ戻って来いっつったのに無視しやがって‼どれだけ探し回ったと思ってんだよバカ‼」
「ライザ……?どうしてここに…?」
ライオンの背からひらりと折りたライザの右肩には、なぜか消えたと思っていたピーちゃんが乗っている。
ピーちゃんは地面にしゃがみこむ私の左肩に飛び乗り「ピーッ‼」と元気な声をあげながら頬に抱きついてきた。
ピーちゃんも私が消してしまったとばかり思っていたけど、誰も気付かない間にこの場を離れて応援を呼びに言ってくれていたんだ。
「良かった……良かった、ピーちゃん‼無事で良かった…」