へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「森の中でお前を探していたときに、そのちっこい魔獣と出会ったんだよ。ついて来いって言われてるような気がしたから後を追いかけてみれば……これはいったいどういうことなんだよ⁉」
ライザは私から視線を逸らし、黒いライオンの口から放たれる氷のつぶてから逃げ回っているレックスさんに目を向けた。
ライザは黒いライオンに氷を止めるよう指示を出すと、両腕でひたすら顔面を守りながら走り回っていたレックスさんが足を止めた。
ライザにキッと鋭い視線を返したレックスさんは、鼻や口の端から血を流している。
「いってぇなぁ、コノヤロー‼誰かと思えばお前、エイジの弟じゃねぇか。くそぉ……魔法さえつかえればこんなクソガキなんか簡単に殺せるのによぉっ‼」
黒いライオンに牙を剥き出しに睨まれている状態でも、足元に落ちていた枝を拾いあげたレックスさんは「俺の邪魔をするならお前も殺してやる‼」とヒステリックな声を響かせた。
ライザは黒いライオンに「アイツに逃げられないよう抑えとけ」と指示を出し、くるりと身を翻し私の元へ歩いてくる。
「お前その足っ……⁉大丈夫かよ?早く病院に行くぞ‼」
「でもレックスさんが‼」
ライザはおぼつかない足で立ち上がった私を咄嗟に支えてくれながら「大丈夫。今に兄貴が大勢の群衆をひきつれてこの場にやってくる」と、実の兄がレックスさんとは同級生で魔導警察官だということを教えてくれた。