へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


ライザはレックスさんの左足に、ぐるぐると唸り声を上げながら噛み付いている黒いライオンに目をやった。



「レネ、兄貴が来るまで絶対にソイツを離すな」



かと思えばまた私に向き直って「そんな足で歩けないだろ。乗れよ」と、目の前で背中を向けると腰を落とした。



これは……おんぶをしてくれるということ?



私を探してくれたことを含めて、なんだかライザがライザじゃないみたいで「ほ……本当にいいの?」なんて戸惑ってしまう。



ライザが優しい。

これまでライザに優しくされた瞬間なんて、ただの一度もないのに。

万年最下位とかってからかわれたり、コップの水を頭からかけてきたライザに、まさかこんな優しい一面があったなんて…。



嬉しい。

なんて瞳を潤ませていると「いいから乗れっつったんだろーが‼わかったら早くしろよ万年最下位‼」と暴言を吐かれたから、慌てて背中に飛び乗った。



やっぱり……ライザはいつもどおりのいじわるなライザじゃないか。

……でも、来てくれて本当に良かった。



ライザの首元に両腕を回し、ほっと安堵の息を洩らす。

「探しに来てくれてありがとう」と呟くとライザから返ってきた言葉は「へなちょこのくせにひとりで森に入ったりすんなよ」という少し棘のある言葉だった。
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