へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「校門の防衛魔法を破ったはお前か⁉」
カサエル先生は右手を前へ突き出し、いつでも魔法が繰り出せる体制をとっている。
「そうだよ。どうしても中に入りたかったみたいだから、校長先生とやらに代わって俺が門を開けたんだ」
ルキは驚くでも焦るでもなくどこか余裕のあるような表情で、カサエル先生を見据えている。
「なんだと⁉お前のような子供が、校長先生の防衛魔法を破った⁉」
カサエル先生のつりあがった目が、ますます鋭く光る。
この状況はまずい……。
このままだったらルキはきっと門の防衛魔法を破った侵入者として、カサエル先生に追い返されてしまうかもしれない。
焦りを感じた私は、威圧的なカサエル先生の前に立ちはだかった。
「まっ、待って下さいカサエル先生!彼は決して悪い人ではないんです!確かに校門を開けたけど……記憶喪失の魔法使いの少年でっ……!」
カサエル先生の尖った視界の中に、空気のように扱われていた私がようやく入りこむことができた。
「記憶喪失の魔法使い?それは一体どういうことだ?」
カサエル先生はルキに向けていた攻撃的な右手を下げるものの、訝しげに歪めた眉を崩さない。
右往左往へ目を泳がせている私と、その後ろに立っているルキを、腕組みをしながら交互に見ている。
「あの……これはですね」