へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


しどろもどろになりながらも、まず森で魔獣に出会ったことから説明をしようと口を開く。

すると、



「おやおや、見慣れない少年がいるねぇ」



後方から聞こえてきた声に振り返った。

なんとそこには瞬間移動でもしたのだろうか、何の音も気配もなく校長先生が立っていた。



小柄で華奢で、真っ白な髪の毛が綿あめみたいで、目を線のようにして笑っているのは70歳くらいのお婆さん。

足腰が悪くていつも杖を手にしているけど、こう見えてもフォルスティア学園でいちばん強い魔力を持っているんだ。



「あのっ……校長先生すみませんっ。門の防衛魔法を破ってしまったけど、ルキは悪い人じゃないんです!」



校長先生は私とルキをちらりと見たあと、カサエル先生に目をやった。



「カサエル先生。彼らのことは私に任せてもらえないかしら。あなたは、教室で混乱している生徒たちと、向こうで野次馬をしている先生方をまとめてくださらない?」



野次馬をしている先生たち……?

カサエル先生と共に、校長先生の視線を追うように校舎へ視線を向ける。

すると靴箱の前には、何者かに門の防衛魔法が破られたことを聞きつけたらしい先生たちが、わらわらと30人ほど集まっていた。



そして靴箱から視線を上に向けると、教室の窓から身を乗り出してこちらを見ている生徒たちの姿。



……これは笑えない。

ルキが防衛魔法を破ってしまったことで、学校中が大パニックになっていた。

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