へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「わかりました、校長先生……」



カサエル先生は納得がいかないような表情をしていたけれど、さっと背を向けると早足に校舎へ戻っていった。



「さて、あなたたち。校長室に来てもらえるかしら?いろいろと、教えてもらいたいことがあるの」

「……はい、わかりました」



校長先生に微笑みかけられ、肩を小さくすくめながら蚊の鳴くような声で返事をした。



何を言われるのか分からない恐怖が、臆病な私の心につきまとう。



生徒ではないルキを校内の敷地内に入れたこと、やっぱり怒られる……?



赤い絨毯が敷かれた長い廊下を、重い足取りで歩く。

私の前を杖をつきながらゆっくり歩く校長先生の後に続き、隣にいるルキの顔を横目でちらりと見てみた。



するとルキは不安に押し潰されそうな私をよそに、高い天井に吊るされている金の装飾が豪華なシャンデリアを、呑気に見上げていた。

両壁の端から端まで描かれている天使の絵を指でなぞってみたりだとか、金色に光る窓枠に触れてみたりだとか、その顔はなんだか楽しそうだ。



ルキったら、どうしてこうも緊張感がないのだろう。

カサエル先生に睨まれたときも顔色ひとつ変えなかったし、むしろ受けて立つと言わんばかりの余裕すらみえた。



どんな状況に立たされても冷静でいられるから、だからこそルキは魔法の扱いが上手なのだろうなと思った。



私なんかダメダメだ。

驚いたり怖がったり、焦ったりとすぐに平常心を失ってしまうから、魔法がうまく発動できないんだろうな…。

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