へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
優秀なルキと不出来な自分を比べてしまって、落ち込みながら廊下を歩いているといつの間にか突き当たりにある校長室の前にいた。
「さぁさぁ、お入りなさい」
「はい……」
校長先生に続き10畳ほどの部屋に入ると、促されるまま茶色い革張りの3人掛けソファーに腰をかけた。
ルキも同じように私の隣に並んで座る。
そして校長先生は、ガラス製のセンターテーブルを挟んだ向かい側のソファーに腰を下ろした。
早くも緊張がピークだ。
校長先生は顔を強張らせる私から視線を外し、やけに真面目な顔をルキへ向けた。
咄嗟にルキが叱られてしまうと思った私はなんとか阻止しようと、校長先生に向かって頭を下げた。
「校長先生ごめんなさい!ルキは悪い人じゃないんですっ!門の魔法を破ってしまったけど…いい人なんです!私が魔獣に襲われているところを助けてくれたんです!」
すると校長先生から返ってきたのはこの部外者が!という怒号……ではなくて、弾けるような笑い声だった。
……あれ、怒っていない?
「そんなに謝らなくてもいいわよ。私はね、怒っているわけではないの。ほら、あなたの隣にいるハンサムな彼。見たところ、うちの生徒じゃないでしょう?」
校長先生の明るい笑顔に、ホッと胸をなでおろす。
「ルキはその……魔法使いで、記憶喪失なんです」
「私の防衛魔法を破ったあたり、かなり力を持った魔法使いであることは分かっているわ。あら、記憶喪失っていうのはどういうことかしら?」