へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
校長先生の丸々と見開かれた瞳が、私からルキへ移動した。
校長先生とルキの視線が交錯する。
「俺は自分が誰なのか、どこから来たのかすら分からないんだ。唯一分かるのは、魔法が使えることと、誰かを助けるためだけに生まれたということだけだ」
それが誰のためなのか、ということは思い出せないと言ったルキは力なく笑っていた。
「先生、お願いします。どうかルキを入学させてあげてくれませんか?このままだと自分の家にも帰れないんです。ルキはとってもいい人で、悪い人じゃないんです!門の魔法は破ってしまったけど……本当に本当に優しい人なんです!」
校長先生は朗らかに笑みを浮かべながら、
「もう分かったわ。彼が悪い人じゃないことはよーく分かったから」
うんうんと何度も頷いてくれた。
「分かってくれてありがとうございます……!」
心の底から安堵の息が洩れる。
これでもうルキが、侵入者として追い返されたりすることはないのだと思えば、自然と頬が緩んでいくのを自覚した。
「わかりました、彼もまた魔力を持った子供のようなので入学を許可します。それから彼が誰なのかということは、こちらでも調査させてもらうとするわ」
「いいんですか⁉」
飛び上がる勢いで立ち上がり、身を乗り出すようにして聞き返した。
するとまた、校長先生は「入学を許可します。今日からは学生寮で暮らしてもらうわね」とはっきりとした口調でそう言ってくれた。