へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


それならば私は、今のうちに教室へ行こうかなぁ。

どさくさに紛れて遅刻をしてしまったから……鬼教師の怒鳴り声が飛んできそうで怖い。



校舎の案内をしながら学校のルールを説明する、と会話をしているカサエル先生の目を盗み…。

少しずつ少しずつ、音を立てないように慎重に、階段を目指してカニ歩きを始めた。



「メイベル・パルディウス」

「はっ‼はははははははいぃっ……!」



一歩を踏み出した瞬間、カサエル先生に声をかけられてしまった。

顔から血の気が引いていくのが分かった。

くるりとこちらを向いたカサエル先生と目が合い、脇の下が一瞬にして汗ばむ。



「今日の1時間目のテストは中断になってしまったから、また日を改めて行うことになった。お前は運がいいな、パルディウス。次回は遅刻をしないように。では速やかに教室に戻りなさい」

「はっ、はい!カサエル先生」



ルキが校門の防衛魔法を破ってしまった。

という前代未聞のハプニングのおかげで、遅刻による問答無用の0点を免れた私は、上機嫌で教室に向かった。



本当に良かった。

0点を避けれたことも、カサエル先生に遅刻を咎められなかったことも。

私が心配していた問題は、これで全て片付いた。

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