へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「あーっ、メイベル!遅いよ、とっくに1時間目の授業は始まってるよ!どんだけ支度に時間かかってんのよ!」



3階にある教室に入るなり、まだ授業中にも関わらず、エイミーが突進するかのような勢いで走り寄ってきた。



「あはは……ちょっと、いろいろあって」



黒板に『自習』とだけ書き残され、カサエル先生の代わりとなる先生がいない教室は、授業中なのにまるで休み時間のように騒がしい。



私たち生徒にとっての『自習』は『休み時間』だから、教室が無法地帯と化してしまうのも今や慣れた光景だ。



「それよりも聞いてよ!校門の魔法が何者かに破られちゃったらしくって!強い魔獣が奇襲に来たかもしれないとか言って、カサエル先生は教室から飛び出しちゃうしっ。怖かったんだからぁっ!」



エイミーは鼻息を荒くさせながら、バシバシと私の背中を叩いてくる。



「痛い痛いエイミーっ!大変だったのは分かったからっ…!」

「怖くない⁉カサエル先生は問題は解決したって言ってたけどさ、安心できなくない⁉」

「まぁまぁでも……ね、解決したって言ってたなら大丈夫だよ」



校門の魔法を破ったのは、これからこのクラスに転校生としてやって来る、ルキだってことは内緒にしておこう。

クラスメイトたちから怖がられでもすれば、ルキが教室に居づらくなってしまうことが目に見えてわかるから。



「おいお前らっ!ビッグニュースだぜ!」



窓際にある席に座り、エイミーと会話を続けていると。

何やら慌ただしい様子で、ライザが教室に入ってきた。

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