へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「えっ、カサエル先生もう戻ってくんの?つーかなんでわかるの⁉」
「この折り紙でできた蝶に、魔法で暗示をかかけておいたんだ。カサエル先生が教室に戻って来そうなら知らせろ、ってな」
「暗示⁉さっすがライザ!天才魔法使いって言われるだけあるねっ」
……なにが天才魔法使いだよ、なにが。
確かにライザは魔法の筆記テストは常に一番だし、技術テストも一番だし、それに扱える魔法の種類も郡を抜いて多い。
天才といえば天才だろうけれど。
あのイジワルな性格がどうにかなればなぁ、なんて思いながら横顔を眺めていると。
不意に廊下側へ目を流したライザと、視線がぶつかった。
「んだよ、万年最下位。じろじろ見てるけど、もしかして俺に何か言いたいことでもあるのかよ?」
「別にっ⁉なっ……なにもないよっ!ただ単にライザが視界に入っただけでっ」
「あっそう、ならいいんだけど?まぁ万年最下位のお前が、まさかこの俺に文句があるなんてそんな身の程知らずなこと、あるわけないよなぁ?」
ふふんと鼻を鳴らすライザを擁護するかのように、数人のクラスメイトたちが火がついたように笑い声をあげた。
悔しい……けれど、なにも言い返せない。
ライザを敵に回してしまうと、彼を慕うクラスメイトたちまで敵に回すことになるんだもん。
「文句なんかないってば……」
こんな奴、世界で一番だいっきらいだ。