へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
そういえば明日は、魔法の実技試験があるんだっけ。
寮に帰る前に、広い校庭の一角にある『第一実技室』に行って魔法の練習でもしようかな。
第一実技室はフォルスティア学園の中で、魔法の使用が許される数少ない場所だ。
名前のとおり、魔法の実技試験があるときは必ずそこで行われるし、休み時間と放課後に限り魔法の練習ができるということになっている。
森で魔獣に出会ってしまったときも、しっかりイメージを思い描いたにも関わらず、魔法を発動させることができなかった。
こんな様子では、次の実技試験も最下位になることは目に見えてわかる。
またライザに万年最下位、とか言われて、クラスメイトに笑われたりなんか絶対にしたくない。
「よしっ!寮に帰る前に少しだけ、魔法の練習でもしようかなっ」
見上げるほど高い校門の前まで来て立ち止まり、くるりと踵を返すと校庭の脇に佇む実技室に向かって歩き出した。
青々とした一面の芝生の中で一際存在感を放っているのは、木製の体育館ほどの大きさがある建物。
黒い鉄製の重厚な扉を押し開けると、ぎぃーっというきしむ音。
ほんの少し開いた扉から中を覗けば、魔法の練習をしている生徒の姿が10人ほど見えた。