へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
トールボットはいつ見てもライザと一緒にいて、その関係性は友達というよりも、どちらかというと舎弟のようにみえる。
ライザのお気に入りになりたくて必死に媚を売っている、っていう印象が強い。
「いいぜ、何回でも見せてやるよ。おい万年最下位、せっかくだからお前にも俺の魔法を見せてやる。こっちに来いよ」
入り口の前から一歩も動かない私を、ライザが離れた場所から手招きをしている。
誰がライザの魔法なんか見るもんですか、自慢なんかに付き合ってられない。
そんなの必要ない、と顔を背けはしたものの…。
魔法を間近で見せてもらうことで、何か勉強になるかもしれないと思い直した私は「わかった、行くよ」とライザの元へ歩を進める。
ライザのことは世界で一番嫌いだけれど、魔法に対する知識と技術は大人顔負けだからな。
そんなライザが使う魔法を、そばで見ておいて損はない。
私が人ひとりぶんの距離を開けてトールボットの隣に並ぶと、ライザは怪しげに微笑んだ。
「よーく見てろよ?今から使う魔法は、お前らみたいな頭の悪い魔法使いには扱えない高度な魔法だからな」
……ほんっとにどこまでも嫌なやつ。
トールボットも何か言い返せばいいのに、ニコニコと頷いたりなんかしてバカみたい。
そういう私もライザに言い返す勇気はやっぱりないから、トールボットと同じような笑顔を貼り付けた。