へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
クッションや枕を使って、私の分身を作る?
エイミーが言っている誤魔化せる方法というのは、形あるものの色を変えたり、そのものの形を変えたりできる『変形魔法』を使うことみたいだ。
「私にできるかなぁ……」
『変形魔法』は難易度もそう高くはない魔法だけど、私が魔法の筆記試験、実技試験と共に学年最下位なことを忘れてもらっては困る。
枕に魔法をかけて自分の分身をつくるだけのことでも、全く別の物に変形させてしまったりと、失敗してしまうのがこの私なのだから。
「自分の顔を鏡でじーっと見ながら、枕に魔法をかけてみたら?詠唱中はちょっとでも違う物を思い浮かべたりしないようにさ」
「わかった……やってみる」
机の引き出しから丸い手鏡を取り出すと、教科書を開いたまま席を立った。
2段ベッドの下段から自分の枕を引き抜くと、深紅色のカーペットの上に枕を置いた。
「あはは、そんなにガチガチに緊張しなくても大丈夫だって。失敗したら次はクッションで試せばいいんだし」
「うんっ……そ、そうだね!」
これは実技試験じゃないんだから、失敗したっていいんだもんね。
そうわかっていても心拍数があがり続けるのは、魔法を使うことに対する苦手意識からかな……。
「リラックスだよ、リラックス」
エイミーの言葉を脳内でリピート再生させながら、左手には手鏡をもち、右手は枕に向かって真っ直ぐと伸ばし、静かに詠唱をはじめた。