へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「まぁでもその、メイベルの顔の枕?髪の毛がすっごくリアルに再現できてるから、使えないこともないか」
エイミーは軽快に席を立ち、私の腕の中から「ちょっと貸して」と枕を抜き取った。
「うはぁ〜……ほんっとメイベルの顔だわ。でも触りごこちはそのまんま枕だし、なんか不気味ぃ」
「あんまりけなさないでよ、凹むから」
「ごめんごめん」と舌を出しながら笑うエイミーはちっとも悪びれた様子はなく、くるりと背を向けると私のベッドに枕を置いた。
「ほら、こうやってドアの方に後頭部を向けてっと。んで口元まで布団をかけて、髪の毛を布団から出せば……ほらほら!メイベルが寝てるみたい!」
「あっ、すごいすごいっ。確かに私が背中を向けて寝てるように見える!」
「胴体の部分には私の枕とか、クッションを詰め込んでおけば完璧っしょ?」
これは……布団を剥ぎとられることがなければエリノア寮長を誤魔化せる!
そう確信した私は「さっすがエイミー、この調子で宜しくね」と、どうだとばかりに鼻を高くさせているエイミーの肩を叩いた。
こうして脱走中の分身をなんとかつくることに成功し、1階のトイレの窓から脱走することも決まったところで。
再び勉強机に向かった私は、ドキドキしながら消灯時間の22時を待った。