へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
うぅ……魔獣が出そうで怖いな。
ルキはまだ寮から脱出できてないのかな。
びくびく身を震わせながら、男子寮のレンガの外壁に沿うようにして、1歩1歩ゆっくりと砂利を踏み鳴らしながら歩く。
すると男子寮の出入り口の前に、やけに大きな黒い影が見えた。
木製の扉の前に佇んでいる影、もしかしてルキ…?
では、ないか。
寮の正面にある森の方向を向いた影は、人間にしては大きくて身長は3メートルくらいありそう。
錆びた鉄のような色の、重厚な鎧を被っている。
じっと森を睨むようにして眺めている姿は、人間というよりかは機械みたいだ。
しかも右手には、なにやら大きなフォークのような武器を持っているしで。
不気味だ。
まだ相手は私の存在に気付いていないようだから、もっと近くで見てみよう。
抜き足差し足忍び足でゆっくり近付くと、やけに背の高い人物との距離はあと5メートルまで縮まった。
「やっぱりアレは人間じゃなくて……魔獣?」
……だよね、きっと。
その姿は鎧を被った人間のようにも見えるけど、やっぱり身長が妙に高すぎることもおかしいし、何よりも生気が感じられない。
まだ魔獣は私に気付いてないみたい。
こっそり逃げるなら今だけど、逆にいえば攻撃を仕掛けることも今が絶好のチャンスだ。
「いや……ここはやっぱり、やるしかないのかな」
このまま放っておくと男子寮に向かって攻撃を繰り出したりするかもしれない、と思えば逃げることなんて私にはできなかった。