へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「メイベル」
魔法の詠唱をはじめようと右手を前へ突き出したタイミングで、不意に現れたルキに後ろから名前を呼ばれた。
はっとして振り返ると、ルキが「彼に攻撃を仕掛けてはいけないよ」と首をふるふると横に振っていた。
「攻撃をしたら駄目?どうして?」
「だって彼は、この寮を守っている魔獣だから。攻撃を仕掛けたりなんかすれば、彼やその周りにいる魔獣から総攻撃にあうよ」
今私の目の前にいる魔獣が、寮を守っているって…。
そういえば今のルキの言葉で思い出したけど、女子寮と男子寮の周りには校長先生がつくりだした魔獣が7体配備されていることをすっかり忘れていた。
「あっ……そっか。だからどれだけ近付いても、私には見向きもしなかったんだ」
急な魔獣からの攻撃を防げるように、寮の真上をぐるぐると舞っている羽の生えたライオンのような魔獣が4体。
それから大きな武器を片手に、武装をした魔獣が3体目を光らせていたんだった。
「校長先生がつくった魔獣ってだけあって、かなり手強そうだからね。間違っても攻撃をしたらいけないよ」
「あはは……うん、気をつける」
ほんっとに私ったらバカ。
毎日登下校をするたびにこの魔獣を見ていたはずなのに、それなのに敵だと勘違いしてしまうなんて何やってんだよって、自分で自分につっこんでやりたい。