へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
そもそも、誰がなんのために人を襲うような凶悪な魔獣をつくったの?
魔獣に『人を襲え』と命令した悪い魔法使いは、いったいどれくらいの人を無差別に傷つけてきたの?
フォルスティア学園の近くにある大都会で両親と暮らしていた10年前は、とにかく平和だったのに。
それなのにある日突然現れた1匹の魔獣によって、私の人生は変わってしまったんだ。
それは忘れもしない。
私の7歳の誕生日のこと。
バースデーソングをパパとママと一緒に歌っていたとき、なんの前触れもなく、巨大な魔獣が天井を突き破って現れた。
白い蛇のような大きな魔獣。
崩れ落ちた天井の瓦礫の下敷きになったパパとママは死んでしまった。
『メイベル……あなただけは絶対に助けるわ』
瓦礫の中から聞こえてくる力のないママの声。
『大丈夫か……メイベル?怪我はないか?』
私はパパに魔法の力で守ってもらったおかげで、魔獣に襲われることもなく無傷で助けられた。
それは私が一生忘れることのできない、辛くて悲しい記憶。