へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「……ねぇ、メイベル!メイベルってば!」
耳元で聞こえる声。
身体を強く揺すられ、ハッと目を開けた。
「ん…あっ、あれ?私…もしかして寝ちゃってた?」
ぼやけた視界の中に映るのは、開きっぱなしの教科書と、いつの間にか火が消えてしまった小さなロウソク。
そして手にはしっかりと羽根ペンが握られていた。
どうやら私は、勉強をしながらそのまま寝てしまったみたいだ。
「寝ちゃってた?じゃないよっ!やっと起きたねっ!もうっ、何回も何回も起こしたんだよ⁉朝食だってもう先に食べちゃったんだからね‼」
そして机の脇に立ち、頬を膨らませている彼女はエイミー・クレーバーン。
ルームメイトであり、幼少期からの親友なんだ。
ほんの少しの癖もない、赤茶色のショートボブ。
吊り目の瞳が可愛い顔も、ばっちりとメイクが施されている。
襟や袖口にフリルがあしらわれた白いブラウス、膝上の黒いプリーツスカートに、黒いマントを羽織ったエイミーは、完璧に登校準備を整えていた。
「早く準備しなきゃ、魔法の筆記テストは1時間目だよ⁉急がなきゃ、遅刻したら勉強した意味ないよっ!」
「げっ!やばいっ!」
エイミーの言葉で真っ青になった顔を上げ、壁掛け時計の時間を確認すると、時刻は8時10分を指していた。