へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
左右の羽を広げると5メートルくらいありそうな巨鳥は、必死に羽をばたつかせて逃げる赤い鳥を次々と飲みこんでいく。
「うわぁ……す、すごい…」
エイミーの高い声と私の声が重なった。
ライザが放った魔獣は天井付近を舞う小鳥をひとのみ、急降下をして床すれすれを飛ぶ小鳥をひとのみ。
それから私たちの前を風のように横切って、逃げ回る小鳥をひとのみ、またひとのみと、あっという間に5羽すべての小鳥が消えてしまった。
「う……うむ、これは驚いたぞ。前々から実力のある生徒だと思っていたが、まだ16歳という若さで魔獣までつくりだしてしまうとは……」
中央から1歩も動いていないライザの元へ走り寄ったカサエル先生は「前代未聞だ」と今までに見たこともないくらいに動揺している。
「じゃあ僕は、合格ということですね。カサエル先生」
「も……もちろんだとも」
ライザはカサエル先生に丁寧にお辞儀をすると、頭上を飛び回っている自分の魔獣を、指をパチンと鳴らし消し去った。
拍手喝采を浴びるライザは、壁際で見学をしているクラスメイトに温かく迎え入れられ、満足げな表情で私の隣にドカッと腰を下ろす。
うわぁ……ライザが隣に来た。
何かまた嫌味を言われそうで怖い。
なんて身構えていると、突然私の耳元へぐっと顔を寄せてきて…。
「さぁ、次はお前が試験をやってこいよ。思いっきり笑ってやるからよ」
それは悪魔のような囁きだった。