へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「じゃあ、悪いけど先に行くね!メイベルも早く来なよっ!」
手を振りながら部屋から出るエイミーに、手を振り返すと、慌てて脱衣場へ入った。
「あーっ、もうメイクをする時間がないっ‼」
普段は洗面台の鏡に向かいつつ、胸下まである眩いブロンドの長い髪を、時間をかけてゆっくり梳かしたり。
幅の広い二重の目にはグレーのアイシャドウや、マスカラで睫毛をふさふさにさせてみたり。
そろそろ彼氏が欲しいなぁ、なんて思いながら、できるだけ自分を可愛くみせる努力は、日々怠らないのに。
先端に緩いクセが残るブロンドの髪はそのままで、ささっと洗顔を済ませてメイクはなし。
大急ぎで制服に着替えると、スクールバッグを引っ掴み、寮を飛びだした。
起床してから、どうにか5分で寮を出ることができた。
と言っても…寮から学園までは、少し距離があって、徒歩でも20分くらいかかるし。
8時30分を過ぎれば校門が閉まってしまうから、中に入れなければテストも受けられない。
私には瞬間移動なんて、高度な魔法は使えないし、空を飛ぶこともできない。
……となれば、やっぱり近道をするしかない?
寮から出てすぐ、向かって正面に位置する、森へ視線を移した。