へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
「いくらレックスさんでも、夜の森は危険ですよ」
レックスさんは校長先生の息子というだけあって、魔法の扱いもとても上手いし、魔獣をいちどに何体もつくれるだけの豊富な魔力もある。
それでも複数の魔獣に一斉に襲いかかられたりなんかすれば…。
いくらレックスさんでも、ひとたまりもないよ。
「この森は魔獣の巣窟のようになっていますよ。俺もこの森で、何度も魔獣に襲われました」
「えっ?ルキも何度も魔獣に襲われたの?」
「そうだよ。メイベルと出会う前に、あてもなく森を彷徨っていたときにね」
理由はわからないけど気を失っていたみたいで、目を覚したときにはどうしてかあの森にいたんだ。
ルキはもう遠い過去のことのように、笑いながらそんな話しをしてくれた。
「そっかぁ。ルキも辛かったね」
記憶を失った状態で魔獣から身を守らなくちゃいけなかったルキは、さぞ混乱しただろうし大変だったんだな、と思うと悲しくなった。
「じゃあお前、森を彷徨っていたってときに銀色の龍のような魔獣を見なかったか?」
私とルキのやり取りをじっと聞いていたレックスさんが、会話を遮るようにしてルキに問いかけた。