へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「銀色の龍?いいえ、龍なんていませんでしたね」

「ねぇレックスさん、銀色の龍ってもしかして、レックスさんがつくった新しい魔獣?」



魔獣専門の人気雑誌、モデムにもレックスさんがつくった魔獣が複数匹紹介されていたけど、龍なんて見たこともなければ聞いたこともなかった。



レックスさんは笑いながら私の質問に首を横に振った。



「いやいや、もう10年くらい前につくった魔獣でな、メディアには公開してなかったんだ。だせる魔力をだしきってつくった、最強の魔獣だよ」

「えぇっ、そうなんですか?魔力をだしきってつくった最強の魔獣⁉どんな姿だったのかな、見てみたかったなぁ」

「残念ながら、ソイツはつくってすぐに逃げちまったから無理な話しだな。同じ魔獣をつくろうにも、なかなかうまくいかないんだ」



何度も同じ魔獣をつくろうと試みても、最強といえるだけの力をもった魔獣がつくれないとレックスさんはため息をはいた。

だから10年経ったいまでも必死にあの魔獣を探しているんだ、と言ったレックスさんは悲しそうだ。



「ん…?ちょっと待ってレックスさん。魔獣は創作主に対しては忠実なはずでしょ?逃げるなんて、いったいどうしてそんなことを?」



ルキが私に譲ってくれたピーちゃんだって、ルキの肩に乗っかったまま私になんて見向きもしてくれなかったし…。

創作主を何よりも大切に思うはずの魔獣が、自らの意思で創作主から離れただなんて考えられなかった。

< 99 / 292 >

この作品をシェア

pagetop