【短編】先生が見上げた空には。
「ここならいーだろ?なんで泣いてんのか言えよ」
どうせダメになる恋なんだ。
言ってスッキリした方がいいのかもしれない。
「わ、私…先生が好きなんです」
「うん」
全然驚いてない様子。気づいてたの?
「でも…諦めようと思って…」
「なんで」
「なんでって…先生には忘れられない人が…」
その時、先生がはぁーっと長いため息をついた。
「やっぱり…言えばよかったな。ちゃんと」
「え…?」
「お前が俺に好意を持ってることには気づいてた。でも最近俺のこと避けてたじゃん?なんかしたのかすげー気になってさ」
「元カノさんのこと、今もまだ好きなんでしょ?…だから、先生のこと必死に忘れようと思って」
先生がポケットからタバコを取り出し火をつける。
「1個さ、話ときたいことがあんだけど」
「な、なに?」
「元カノ…佳織(かおり)っていうんだけど。5年前にガンで死んだんだ」
「え…」
「あいつ、俺と付き合ってた時ガンだってこと隠しててさ。でも若いから進行も早くて、急に悪化して死んでしまったんだ。あまりにも呆気なくて、俺しばらく何も出来なかった」
驚いて言葉を失った。
「入院中とかさ、すげー辛いはずのに、あいつ俺といるときはいつも笑顔で…真似できねーよ。本当にすごいやつだった」