【短編】先生が見上げた空には。
話している時の先生の目が、いつもと違うから。
穏やかで、優しい目をしている。
こんな先生見たことないよ。
「その人、すごい素敵な人だったんだ…」
「まぁな…尊敬してる」
別れたみたいだけど、全然忘れられてないじゃん。
先生の顔を見たらわかる。
見たことないくらい優しい顔してるもん。
こんな先生は知りたくなかった。
心の中で黒いものが広がる。
「わ、私戻るね…昼休みも終わるし」
「ん?あー、そうだな。めんどくせぇー。戻るか」
「先行ってる!」
スクっと立ち上がり、急いで屋上のドアを開けた。
「美咲?」
呼ばれても振り返れなかった。